配偶者からの暴力(DV)による被害者の自立支援に関する質問主意書 |
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平成十八年二月二日提出
質問第三八号
配偶者からの暴力(DV)による被害者の自立支援に関する質問主意書
提出者 赤嶺政賢
配偶者からの暴力(DV)による被害者の自立支援に関する質問主意書
二〇〇一年、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」、すなわち「DV防止法」が施行され、二〇〇四年その一部が改正され、同年十二月二日に施行された。
政府は、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針」を示している。
その中には「被害者の自立の支援に関する事項」が位置づけられており、配偶者からの暴力による被害者(以下「DV被害者」という。)の自立支援のために、公的相談機関や民間支援機関等においては様々な取り組みがなされているところである。
例えば、政府においては、国民健康保険加入の際に、厚生労働省国民健康保険課長名で通知を出し、被害者を保護した公的シェルター、民間シェルター等の居場所が判明することのないよう配慮して加入手続きをとるよう、関係機関に通知するなど被害者の実態を踏まえた措置を講じているが、なお改善すべき課題は少なくない。
実際、相談にあたっている民間団体、弁護士、地方自治体職員、地方議員などから、DV被害者の自立支援の立場から、他法令の運用の改善を求める意見が寄せられており、その早急な是正を求めたい。
従って、以下質問をする。
一 児童扶養手当は、母子家庭の生活の安定と児童の福祉の向上のために、十八歳になる年の年度末まで、児童の監護をしている者に支給される。(障害をもっている児童の場合は二十歳の誕生日の前日まで、特別児童扶養手当が支給される。) しかし、離婚が成立する以前のDV被害者の家族の場合には、夫から子どもを連れて逃れたケースでは、一年を経過しなければ、児童扶養手当の受給資格が得られない。 妻に離婚の意思があり、夫の養育費の支払がない場合は、地方自治体の相談窓口などの公的機関で、DV被害者であり自立を望んでいることの証明等があれば一年以内であっても、児童扶養手当法の趣旨を踏まえて、支給対象とすべきではないのか。
二 児童手当は、支給要件を充たした児童を養育している者に対して、支給されることになっている。しかし、離婚前の別居状態で、母親が子どもを監護しているが、父親は養育費を支払わないにもかかわらず、父親に対して、児童手当が支給され続けるケースが多く見られる。 父親から「受給事由消滅の届出」が提出されない限り、母親に児童手当の支給がなされない。 市長村長は、支給の一時差止め権限を有しているが、受給事由消滅の手続きについても地方自治体の長の職権によってできるように運用の改善を図り、児童手当法の本来の目的に則った支給ができるようにすべきではないのか。
三 公的シェルターや民間シェルターなどが充実していない地方自治体はまだ多い。 その場合、DV被害者が、賃貸住宅に住む友人宅などに身を寄せ、自立の準備に入るため、生活保護の申請に際して、地方自治体によっては、家主の証明を求め、家主の同意が得られなければ、申請を受けつけない事例がある。 政府は、かかる取り扱いを生じさせないために、地方自治体に対して是正等の周知徹底を図るべきであると考えるがどうか。
四 DV被害者の家族の子どもが保育園に通っている場合、保育所の保育料の算定については、離婚が成立するまでの間の保育料は、年度途中においては夫と同一世帯であるとして算定されている。 このために大分市では、弁護士の申立により、大分市の要綱で定めている保育料減免要綱に沿って、母親の収入のみで保育料算定を行った事例がある。 地方自治体には、明確な保育料減免規定を持っていないところも存在することから、厚生労働省は、「保育所の費用徴収制度の取り扱いについて」(平成七年三月三十一日付)の通知を発している。その中では、「世帯の負担能力に著しい変動が生じ、費用負担が困難であると市町村長が認めた場合は、当該年の課税額を推定し階層区分の変更を行って差し支えない」としている。 同通知の「世帯の負担能力の著しい変動が生じ」という中には、DV被害者が含まれるということを明確にして、地方公共団体に周知徹底すべきではないのか。
五 政府は、「DV防止法」施行後、DV被害者の実態について、調査し把握しているのか、実態を把握しているのであれば、それを明らかにされたい。また、DV被害者の自立支援のために、国としてどのような施策を講じているのか。
右質問する。
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平成十八年二月十日
答弁第三八号
内閣衆質一六四第三八号
平成十八年二月十日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員赤嶺政賢君提出配偶者からの暴力(DV)による被害者の自立支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員赤嶺政賢君提出配偶者からの暴力(DV)による被害者の自立支援に関する質問に対する答弁書
一について
夫から子を連れて逃げた「配偶者からの暴力による被害者」であって離婚が成立していないものについては、その児童の父の監護意思及び監護事実が客観的に認められず、かつ、母に離婚の意思がある場合に、父がその児童を遺棄していると判断され、この状態が一年以上継続している場合には、他の支給要件を満たす場合に限り、児童扶養手当を支給することとされているところである。
これは、父がいないのと同じ状態であることにかんがみて、児童扶養手当を支給することとされているものであり、このような状態であるとの客観的な判断を適切に行うための最低限の期間として、一年を定めているところである。このため、配偶者からの暴力による被害者が自立を望んでいることをもって、当該被害者を児童扶養手当の支給対象とすることは困難である。
二について
児童手当については、小学校第三学年修了前の児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父又は母等に支給することとされている。
御指摘の事例のように「離婚前の別居状態で、母親が子どもを監護しているが、父親は養育費を支払わない」場合には、父から受給事由消滅届が提出されなくても、母から受給資格認定請求が行われ、市町村長が、母が当該児童を監護し、かつ、これと生計を同じくしているという事実を確認すれば、市町村長は、母に対する受給資格を認定し、父に対する支給を停止するとともに、母に対して児童手当の支給を行う取扱いが可能である。
また、市町村長は、運用上、受給事由消滅届が提出されなくても、職権により、受給事由消滅の処理ができることとなっており、その手続については、厚生労働省から都道府県知事を通じて市町村長に周知しているところである。
三について
生活保護制度においては、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを保護の要件としており、「家主の証明」や「家主の同意」は、保護の要件としていない。仮に、御指摘のように「家主の証明」を求め、「家主の同意」が得られないことのみをもって保護の申請を受け付けなかったとすれば、そのような取扱いは適当でない。
配偶者からの暴力による被害者に対する生活保護の適用については、これまでも、保護の要件を満たす場合には適切に保護を適用するよう、厚生労働省から周知しているところであり、今後とも適切に対処してまいりたい。
四について
保育料については、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第五十六条第三項の規定に基づき、保育の実施に要する費用を扶養義務者等から徴収した場合における家計に与える影響を考慮して市町村長が定めることとされており、保育料の徴収基準となる課税額の階層区分の認定に関する「保育所の費用徴収制度の取扱いについて」(平成七年三月三十一日付け児企第十六号厚生省児童家庭局企画課長通知)により、「世帯の負担能力に著しい変動が生じ、費用負担が困難であると市町村長が認めた場合は、当該年の課税額を推定し階層区分の変更を行って差し支えない」ことを各都道府県等に対し通知しているところである。
配偶者からの暴力による被害者であっても、「世帯の負担能力に著しい変動」が生じているとは限らず、一律の取扱いとすることは困難であるが、同項の規定の趣旨に照らし、個々の家計の収入状況の実態に応じた保育料が適切に徴収されるよう、各都道府県等の保育事務担当者を集めた会議等を利用して周知徹底してまいりたい。
五について
内閣府において、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成十三年法律第三十一号)の施行後、平成十四年十月から同年十一月にかけて、「配偶者等からの暴力に関する調査」を実施し、平成十五年四月にその結果を公表するとともに、内閣府のホームページに掲載している。また、平成十七年十一月から同年十二月にかけて、「男女間における暴力に関する調査」を実施し、現在、調査結果を取りまとめているところである。
国においては、配偶者からの暴力による被害者の自立を支援するために、@母子家庭等就業・自立支援センター事業の対象者に、子のいる配偶者からの暴力による被害者を加えるとともに、A公営住宅法施行令(昭和二十六年政令第二百四十号)を改正し、平成十八年二月一日から、これまで認めてこなかった配偶者からの暴力による被害者の公営住宅への単身入居を可能にするなどの施策を講じてきたところである。
また、国は、公共職業安定所における職業紹介や公共職業能力開発施設における職業訓練を行うとともに、母子生活支援施設における保護や生活保護に要する経費について負担するなど、様々な施策を講ずることにより、配偶者からの暴力による被害者の自立支援を行っているところである。
今後とも、配偶者からの暴力による被害者の実態を把握し、適切な自立支援のための施策を講じてまいりたい。
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