(娘) 史子
学校から家に向かう角を曲がると駆け足になる。「ただいま」の大きな声を迎えてくれるのは、父の大きな背中だった……
土曜日の昼ご飯は父がつくった。メニューはいつもアジの開き、たまねぎのみそ汁、そして白いご飯。四六時中忙しい父と、ゆっくり話せる大切な時間。私は一週間分の出来事を、ここぞとばかりに喋った。
中学のころ、勉強、部活動、さらには友情の間で悩み、葛藤していた私に
「何でも投げ出すのは簡単だが、辛い時にこそ一つのことをやり抜くことが大切だ」
と、父は教えてくれた。
就職先を、知人の紹介で法律事務所にしようとしたときに父は言った。
「居心地のよい場所で働くのもよいが、何のコネもない会社に就職して、大きな組織の一員として会社勤めするのも、自分を試すチャンスだ。がむしゃらに働いてこそ、労働者の気持ちが理解できる」
この言葉を胸に、私なりに精一杯会社勤めをした。
この時の経験から、労働者として権利を主張するには、精一杯能率よく働くという義務があること、仲間と連帯すること、経営についても学習することが必要なことを学んだ。
その私もいま33歳。父は今、私の三人の息子にとって大切な「じいじ」である。忙しくてなかなか会えないが、やさしく可愛がってくれる。
未来を担う子ども達のためにも、平和で暮らしやすい大分市を創るために、今後も体に気をつけながら、全力投球してほしいと思う。